
デザイン性や防犯性が高く、高層階からは周囲を一望できることから豊かな暮らしを連想させる超高層マンション。
俗に言うタワーマンションは、豊かな暮らしとは反対に災害時は普通のマンションよりも大きい被害が懸念されています。
今回ご紹介する内容をもとに災害時の備えをしましょう。
目次
タワーマンション主な災害リスク2選
タワーマンションで被害の拡大化が懸念される災害は、主として「台風」と「地震」の2つです。
それぞれのリスクを挙げてみましょう。
災害リスク1:台風接近による強風リスク
台風が接近すると豪雨や強風をもたらし、高層階など高い場所ほど大きい影響を与えます。
遮る建物が無く風を直に受けてしまうことが理由ですが、実際に居住している方の感想によると高層階は強風による建物の揺れを大きく感じるそうです。
台風が大型であると、音による眠れないほどの恐怖感とともに家具や家電などの転倒リスクもあるため注意しなくてはなりません。
災害リスク2:地震・台風直撃による浸水リスク
地震や台風が直撃すると、海や川の堤防が決壊することによる住宅の浸水リスクがあります。
浸水と聞くと低層階の方への被害が懸念されますが、タワーマンションの場合はエレベータまで浸水してしまうと高層階の方にとっても生活に大きな支障をきたしてしまうでしょう。
また、タワーマンションは地下にライフラインなどの供給設備が配置されているケースや、地下駐車場をかまえているケースも多く見受けられます。
地下が冠水してしまうことにより、電気や水が各戸へ供給されなくなる非常事態や自動車が動かせず故障や全損のリスクがあるため、物件選定の際には慎重に考慮すべき点です。
タワーマンション3つの構造と特徴
日本におけるタワーマンションは3種類の構造があり、いずれにしても専門家による災害時のシミュレーションを何度も繰り返し行い、倒壊しないように設計・建築されています。
3種類の構造によって揺れの大きさや体感が異なるので、それぞれの特徴を理解した上で災害に強い建物を選定しましょう。
建物の倒壊を防止する耐震構造
「建物の倒壊防止」を目的とした耐震構造の特徴は、骨組みである柱や梁、壁の強度を高めることにより建物自体が自身に強い構造であることです。
一般的な集合住宅は耐震構造で造られており、その背景にはグレードの選択やコスト調整が比較的自由にできることがあります。
難点としては、地震のエネルギーを直に吸収してしまうため、揺れや建物の変形・損傷の影響が大きいことです。
震災後の修復コストが大きく、完全に修復されるまでに時間を要します。
建物への振動・衝撃を和らげる制振構造
制振構造とは、耐震構造にプラスして柱や梁に振動・衝撃を吸収する制振装置(ダンパーなど)を設けて建物の揺れを抑える構造のことで、地震のエネルギーを制振装置が受け取るため、その衝撃により柱や梁が変形しづらいことが特徴です。
耐震構造と比較するとコストはかかりますが、耐震性能が高く震災後の修復も容易にできることがメリットと言えるでしょう。
制振構造はタワーマンションに適した技術で、強風による建物の揺れにも効果があるとされています。
現在では、戸建て住宅などにも幅広く使われている構造です。
建物の揺れを低減する免振構造
免震構造は、基礎と建物の間にクッション材となる免振装置(積層ゴムなど)を入れて層を設けることにより、地震が発生しても建物へ伝達する揺れを大幅に低減させます。
基礎と建物に接地させず隙間を作り、免振装置を利用して地震のエネルギーを逃がすのです。
大型地震でも有効に働き、免震構造でない建物と比較すると高層階の家具などの転倒は格段に減少するでしょう。
ただし、物件選びの際には水平方向に動く横揺れには効果的ですが、縦揺れにはあまり対応していません。
供給設備の停止で想定される被害と備え
生きていく上で欠かせない電気や水などのライフライン。
水や電気が行き届かず、被災者の生活が困難になっている状況をニュースなどで一度は目にしたことがあると思います。
タワーマンションにおける供給設備の停止で想定される被害と、事前にできる備えを挙げてみましょう。
電気供給設備の停止による停電被害
停電すると考えられるタワーマンションの被害についてみてみましょう。
エレベータが作動しない
停電により共用部に与える重大被害としては、エレベータが作動しないことです。
エレベータは、地震感知器によって揺れを確認すると最寄り階へ緊急停止する仕組みになっており、機器によっては二次災害など被害防止のため長時間に及び停止するように設計されています。
実際に地震発生時に都心でもこのような事態が発生しており、足止めされた住民は階段で昇降しなくてはならず、高層階の方たちは住戸へ戻るだけで一苦労です。
年配の方や乳児のいる家庭が高層階を選択する際、特にこれらを考慮する必要性があります。
エアコンが作動しない
各戸への影響として大きな被害の1つは、エアコンが作動しないことです。
高層階は風通しが良く、涼しいイメージがあるかもしれませんが、夏にエアコン無しで快適に過ごすことはできず、どの住戸にも空調設備は完備されています。
タワーマンションの高層階でも、エアコンが無くては熱中症が心配される程の気温であることは覚えておきましょう。
南側にバルコニーがあるリビングなどは暑くなりやすいため、北側の部屋や玄関回りが涼しいとされています。
冷蔵庫が作動しない
もう1つの被害は、冷蔵庫が作動しないことです。
特に夏場は、冷蔵庫が停止してしまうと食べ物の管理が非常に大変になります。
冷凍庫の食べ物が解凍されるまでの時間が短く、品質の衛生面を考慮しても、素早く食べ切らなくてはいけません。
もちろん電子レンジも作動しないので、試行錯誤してその場を乗り切ることが求められます。
タワーマンションの中層階・高層階の場合、停電でエレベータが使用できなくなると、小まめな買い出しや食料・水の配給にいくのも大変です。
低層階や一戸建てなどに済む場合よりも食料の備えをしておきましょう。
給水設備の停止による断水被害
タワーマンションの場合、給水設備に電気が使われていると、停電時に断水することがあります。
停電被害だけでなく、断水被害についても知っておきましょう。
飲み水が確保できない
様々な災害リスクの中でも、人の生命にも関わる大きな被害が「飲料水」の供給が断たれることでしょう。
建物の供給設備が直接打撃を受ける以外にも、液状化や道路内のマンホールの詰まり・破損などで上下水道が断水してしまう状況も考えられるのです。
飲料水の確保は乳児のいる家庭では、特に深刻な問題になります。
断水発生時には、近隣のスーパーや薬局などのショッピング施設へいち早く向かい、購入することをおすすめしたいところです。
しかし、上述したエレベータが停止する事態が重なってしまうと、高層階の方がやっと地上へ降りられた頃には、どこのお店も売り切れになっているかもしれません。
タワーマンションの場合、各階で災害用の水を共有スペースに備蓄していますが、スペースは限られています。
1日に必要とされる水は1人3リットルと言われています。
家族分の水を、最低でも3日分は常備しておきましょう。
トイレやお風呂が使えない
大きな災害で被災しても、人は日常生活を送っていかなくてはいけません。
断水が続くと、トイレやお風呂の生活排水がうまく回らず、日常生活を送っていくうえで不便さを感じるでしょう。
非常用トイレで何とか排泄をやり過ごすことができたとしても、水そのものが無いと何日かお風呂に入れないことがあります。
飲料用の水の確保が優先となるため、水を使わなくても清潔さを保てるような対策が必須です。
洗い流さないシャンプーやタブレットタイプの水が無くてもできる歯磨き粉などを準備しておくと、断水時も清潔さを保てます。
一般的にタワーマンションは都心に建てられることが多く、さらに人の多い都心では供給の復旧に向けて素早く対応する傾向にありますが、事態が長期化することも想定しておいた方がよいでしょう。
停電・断水時への備え
タワーマンションへ居住する場合は一般的なマンションよりも危機管理意識を高く持ち、停電・断水への備えを十分にしておくことが重要です。
情報収集機器の充電確保
まずは、スマホやパソコン、ラジオなど情報収集機器の電源を絶やさない状態にしておきましょう。
日頃から予備電池を多く購入しておくことやモバイルバッテリーは定期的に残量状況を確認することが大切です。
情報を把握できる状態にしておくと、二次災害の防止などにも繋がります。
非常食と保存容器の備蓄
すぐに買い出しや食料の配給を受けにいけないタワーマンション。
非常食と合わせて、保存容器も多く用意しておきましょう。
断水時は雑排水が使えず、食事をした後のお皿を洗うことが出来ず、シンクへ放置したままになります。
臭いや害虫などの原因に繋がるため、紙皿と割り箸を多く準備することがおすすめです。
また、大きめのクーラーボックスなどで生ものを長時間保存できるような保存容器を備蓄しましょう。
スポーツ飲料水などを凍らせておくと、冷却剤の役割にもなります。
非常用電源の作動・稼働時間を確認しておく
タワーマンションは多くの場合、何らかの問題で電力供給が途絶えてしまったシーンに備え、非常用電源装置があります。
日本は安定した電力供給を行っているため、非常用電源装置の認知度があまり高くありませんが、停電などの非常時に一定時間動いてくれる頼もしい存在です。
建物に付帯する非常用電源装置が作動するまでの過程や稼働時間について、事前に把握しておくとよいでしょう。
タワーマンション災害発生前にできる安全対策4選
タワーマンションで災害発生前にとっておくべき安全対策を4つご紹介します。
先に行動しておくことで、いざと言う時に冷静な対処ができるようにしておきましょう。
避難経路の確認
災害時の避難は、停電していなくとも基本的には階段です。
あらかじめ住戸から非常用階段までの場所を確認し、実際に一度地上まで降りてみることをおすすめします。
停電によりオートロックが作動せず、エントランス扉が開かなくなる事態も懸念されるため、日頃使用しない外部へ繋がる扉の位置も確認しましょう。
また、バルコニーに設置されている避難ハッチの使用方法を定期的に確認することも大切です。
バルコニーに置くものは必要最低限にする
タワーマンションでバルコニーにテーブルやイスを置き、優雅に街を一望したくなります。
しかし、日常的に色んな物を常備するのは避けるべきです。
他のマンション同様に強風で吹き飛ばされてしまうことに加え、転倒により窓ガラスが割れると避難経路妨害にもなりかねません。
タワーマンションでは、景観や災害対策のためバルコニーの使い方に関しても規約があります。
タワーマンションごとに異なるので、バルコニーの使用方法について入居前に確認をしましょう。
ハザードマップと防災マニュアルの確認
ハザードマップと防災マニュアルの確認しておくことも重要なポイントです。
ハザードマップは多くの地域でインターネット上にも公開されており、タワーマンションを選ぶ際に確認している方も多くいるでしょう。
防災マニュアルは、通常は建物ごとに完備されており、災害時の行動などがマニュアル化されています。
購入時にもらっていない方は、一度管理組合や管理会社へ問い合わせてみましょう。
家具や家電の転倒防止対策
災害時の備えとして非常に有効的な家具・家電の転倒防止対策ですが、タワーマンションの特に高層階に住む方は必ず行いましょう。
上述の通りタワーマンションの高層階ではその構造上、強風が吹くだけで大きな揺れを感じ地震やすく、それほど大きな地震でなくても高層階部分では揺れが大きくなることもあるので、他のマンションよりも危険です。
災害規模がさほど大きくなくとも、対策しておくだけで自身や家族を怪我から守ることに繋がります。
引越し先でタワーマンションを選ぶ際の注意ポイント
タワーマンションならではの災害リスクや対策をお伝えしましたが、これからの引越し先で複数のタワーマンションを比較している方は選定のポイントを見極めましょう。
災害に強いタワーマンションを見つける
「防災強化マンション」という言葉をご存知でしょうか。
建物自体を耐震・耐火ともに防災に強い構造に適合させ、被災時のインフラ整備強化や住人による防災訓練、食料の備蓄システムなどを兼ね備えた防災に力を入れたマンションのことです。
市町村による認定制度があるため、どのタワーマンションかで悩む方は防災強化マンションを選ぶと気持ち的にも安心できます。
また、物件探しの段階で防災内容について不動産会社へ聞いておくことで吟味しておきましょう。
災害時は低層階にメリットがある
タワーマンションは高層階へ憧れを抱く方が多いかと思いますが、災害時には低層階ほどリスクが低いです。
実際に海外では、タワーマンションで発生した火災により高層階の方が逃げ遅れ亡くなるケースも発生しています。
タワーマンションに住みたいけど災害時のことを考えると怖いという方は、あらかじめ予見して低層階や中層階に住むこともひとつの手です。
高層階よりも物件価格が安いなどのメリットもあります。
引越しシーズンを検討する
タワーマンションでの災害を避けるためには、引越しシーズンを意識することにも意味があります。
地震の予測は難しいですが、台風の時期である秋頃を避けることができます。
台風シーズン後の冬に引越しをしても、翌年の秋頃に災害のリスクはありますが、一年様子を見ることで被害状況や供給設備停止時の情報を得られ、構造や選ぶ階数の参考にもなるでしょう。
災害後の生活シミュレーションが大切
地震や台風などの自然災害が多い日本。
タワーマンションに住みたいと考えている場合は特に災害時を想定して物件探しをすることも大切です。
タワーマンションは災害リスクが減らせるように設計されているので、ある程度の災害にも耐えられますが、やはり身を守るためには自分自身でとる行動や対策が重要となるでしょう。
とくに高層階の居住を検討している方は、災害後にライフラインが断たれた状況における生活シミュレーションが非常に大切になります。
そのため、物件探しの段階で災害に強い、または防災に関する意識の高いタワーマンション選びをすることが大切です。
そういったご相談も不動産会社は可能ですので、費用面などとあわせて相談してみましょう。
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