建築用語にリノベーションとリフォームがあります。その二つにはどのような違いがあるのでしょうか。耳にしたことがある言葉で、違いがあいまいなままリフォームもリノベーションも使っている人もいるかもしれません。リノベーションとリフォームの違いを検証します。このような場合には、リノベーションかリフォームかどちらが適しているのかを、費用の面やそれぞれのメリット・デメリットやデザインなどの観点からまとめました。
目次
リノベーションとは
リノベーションを辞書で調べると既存の建物に大規模な改修工事を行うこと。用途や機能を修復して性能を向上させ、付加価値を与えることとあります。実はリノベーションもリフォームもはっきりとした定義はなく、なんとなく使われていることがほとんどなのですが、ここでいうリノベーションは、現状の状態からより使いやすい環境に内装を変化させることが、一番近い意味だと思います。
リノベーションは、内装だけでなく外装にも使われます。例えば、マンションのエントランスを大規模にイメージチェンジさせた場合もリノベーション物件になります。都心にある分譲マンションで、最初は何の変哲もない白いエントランスだったのが、築7年で分譲会社が変わり、エントランスをリノベーションさせたところ、濃いブラウンで統一され、落ち着いた雰囲気で、オシャレな感じが高まり、人気が出ました。高級分譲マンション銘打ち売り出したところ、たちまち人気物件となりました。
例えば中古マンションを購入して、内装をリノベーションして、自分仕様にしてしまえば、リノベーションの費用は掛かりますが、新築物件を購入するよりも安く、理想のマンションを手に入れることができます。6畳と4畳半の和室2部屋をフローリングにして、リビングとつなげれば、30ほどある広々としたリビングになります。広々としたリビングという付加価値がつきます。
スケルトンリノベーションといって、建物だけを残し、中の内装や設備などをすべて一新する方法も流行っています。この方法だとリビングやキッチン、トイレやバスルームの位置を好きな場所に設定することができます。より一層理想の家づくりができます。
このように、物件に付加価値をつけたり、暮らしに合わせて部屋の間取りを変化させたりすることをリノベーションと言います。
リフォームとは
リフォームとは、主に古くなったものを元に戻すときに使います。例えば、古くなったトイレの壁紙を張り替えたり、畳を交換したり、不具合のある設備を修理したりなどです。
賃貸物件では、入居者が退去したときに、次の入居者のために原状回復工事をします。これをリフォームといいます。例えば、長年たばこの煙を吸い込み黄ばんできた壁紙を元の白い壁紙に張り替えることや、床に凹みや傷がある部分を張り替えることなどです。
居住中の住居で、一部分のみ修復する際もリフォームを使います。トイレをアップグレードさせることもリフォームと言ったりもします。リフォームとリノベーションの明確な定義がないので、便宜上、一部分の修復や改装はリフォームという言葉を使うことがありますが、これをリフォームというのは間違っているということはありません。
リフォームは、主に部分的に行われることが多く、キッチンだけだったり、リビングだけだったり、バスルームだけだったりという場合です。一部分のリフォームだけですので、住んでいながら工事を行うこともできます。その間は、騒音や部屋が狭くなる、他人が出入りするので落ち着かないなどはありますが、引っ越しをしなくても済むので楽です。
リノベーションのメリット・デメリット
リノベーションのメリットは、理想通りの内装や間取りにできるということです。マンションや戸建て住宅はあまたありますが、その中で、使い勝手や内装、設備どれをとっても1つも不満のない理想通りの住居はいくつあるでしょうか。仮に理想の物件が見つかったとしても、その物件が空き家とは限りません。探すのが難しい理想の物件を探すよりも、自分で建てた方が早いです。
新築で物件を建てるのには、費用がかかります。戸建ての場合は土地を購入するところから始めなければなりません。駅から近いや、人気のエリアなどの住環境のよい土地に住むのならば尚更です。そこで活用するのがリノベーションです。理想の場所に中古物件を購入して、中身をリノベーションすればよいのですから。床の素材、キッチンの設備、バスルームの形状などすべてにこだわることができます。これまで誰も済んだことのない間取りにすることだってできるのです。間取りの上で不満に思っていたことがリノベーションによってすべて解消されます。
もちろん、リノベーションの費用は掛かりますが、それでも新築物件を購入したり、注文住宅を購入したりするよりも安い費用で済むのがメリットです。どれくらい抑えられるかは、築年数や場所にもよりますが、一般的に見て、平均4割ほどは新築より安く購入できると思われます。
リノベーション済み物件を探すという方法もありますが、リノベーション済み物件は、リノベーション費用が設定金額に含まれていることがほとんどなので、そのリノベーション済み物件が理想通りでない限りは、自分でリノベーションした方が無駄な設備を省くことができるので、無駄な出費を抑えることができます。
一般的に、新築物件は、物件の資産価値が下がっていきますが、中古の物件は、築15年以上経つと、価値がそれほど下がらなくなります。もし売却をすることになっても、売却金額は、購入金額よりもそれほど下回る金額ではないということです。リノベーションしていれば、上がることもあり得ます。
反面、リノベーションはリフォームと比べて費用が高くなるということと、工事期間が長くなるので、購入してからしばらくは入居できないというデメリットもあります。
リノベーションの例と費用相場
リノベーションの実例とどのくらい費用がかかるかを見ていきましょう。都心のマンションで、洋室が2つ、和室が2つの4LDKのお宅をリノベーション。和室をフローリングにして、ダイニングとつなげて広々としたLDKに変更しました。キッチンも奥まったところにあった独立キッチンを開放感あふれるアイランドキッチンに。元々収納が少なかったので、リビングの一部にウォークインクローゼットを設置し、収納のスペースを広くしました。その他、バスルームのタイプを変更し、洗面所もおしゃれに変更しました。壁も全体的にタイル貼りを用いることで、レトロモダンな雰囲気に。このリノベーションにかかる費用は700万円くらいです。
1000万円で購入した和室2洋室1の3LDKの住宅をリノベーション。畳の部屋をフローリングにして、元洋室と畳の部屋をつないで1つの空間にしました。そこにキッチンを置いて、生活するスペースを1つにまとめました。壁と扉をなくし、移動がスムーズにできるようにしました。扉をなくすことによって、部屋の温度が一定に保つことができます。家の西側にバストイレがあり、その奥がもともとダイニングキッチンだったのをウォークインクローゼットを作り、生活スペースと分けるという使い方です。これにかかった費用は500万円くらいです。
最後に、築20年の中古マンション、和室2つ洋室2部屋の4LDKをリノベーション。和室をフローリングにして、リビングとつなぎ広々とした1LDKに。床素材に、ペットがいるため、塩化ビニル素材でフローリングに似せた床材を使用しました。トイレを最新式のトイレに入れ替え、オープンキッチンの上部の棚を省きオープンキッチンにしました。バスルームの床も冷たくなりにくい床と入れ替え、洗面所もこだわりの洗面所を。窓は真空ガラスを使用。ベランダには自動で開閉できる庇を設置して、1000万円くらいです。このお宅は200平米くらいあるのでこのくらいかかりましたが、物件の購入価格は、1700万くらいです。
リフォームのメリット・デメリット
リフォームすることのメリットは、リノベーションと比べ、工事費用を安く抑えることができることです。工事期間も短いので、生活をしながらリフォームすることも可能です。
リノベーションをすると仮住まいが必要ですが、リフォームは、一部分の改修なので、リフォームをしない箇所では生活ができます。トイレやバスルームのリフォームも1日あれば済むので、その日の工事時間中は使用できなくても、工事したその日から使用することが可能です。
入居前に大規模なリフォームを行う場合でも、工期は比較的短くて済みます。仮住まいの場合、家賃が発生するので、仮住まいの期間が短ければそれだけ費用が浮きます。
その反面、全面的に設備や間取りを変更することはできません。古くなったものを元の新しかった時の状態に戻すという考え方のため、キッチンの交換はできても、キッチンの場所そのものを動かすことはできません。トイレの便器を最新式のものに変更しても、トイレの位置を変えることはできません。使い勝手の悪い住宅の場合、設備は新しくなっても使い勝手は元のままなのです。
またリフォームで、家の強度を強化しようとするとリノベーション会社に依頼するよりも割高となってしまう場合があります。リフォーム、リノベーションの会社で何ができるのか、何ができないのかを把握して、その会社の得意としている部分を依頼しなければ、返って効率が悪く費用もかさんでしまうので注意が必要です。
リフォームの例と費用相場
リフォームの実例と実際にかかった費用を見ていきましょう。築35年の戸建て住宅です。部屋数が多くて、それぞれの部屋に入るためには中廊下を通る必要がありました。廊下は光が入らないので、薄暗い印象でした。壁を取り払い、部屋と廊下と台所をつなげて一つのリビングルームにリフォームしました。
キッチンも奥まったキッチンを対面式のオープンキッチンにしたので、家事をしながらリビングルームの家族と会話をすることができます。バスルームやトイレをバリアフリーにし、転倒防止の手すりを設置しました。大規模なリフォームのため、費用は1000万ほどかかりましたが、工期は1カ月ほどで、工事中は手を入れない部屋で生活していました。
築20年弱のお宅では、キッチン、バスルーム、トイレ、洗面所のリフォームを。お風呂場は、浴槽を幅広の浴槽に変え、壁に手すりを設置しました。床は、滑りにくくて、冷えにくい素材のタイルに変更し、浴室乾燥機を設置しました。トイレ内に洗面スペースを設け、幅を拡張、洗面ボールの下に棚を作って収納スペースを確保しています。工期は1ヶ月ほどで、費用は400万くらいです。
築15年くらいの物件ですが、玄関から入って廊下で左右の部屋に分かれているので全体的に部屋が狭い印象のお宅。廊下と部屋と台所をつなげて広々としたリビングルームになりました。壁にむかっていたキッチンを対面式のキッチンになりました。お子さんがまだ小さいご家庭なので、調理をしながらリビングの様子を見ることができます。工期は1カ月、費用は300万円くらいです。
築30年の木造戸建て住宅です。和室の畳をフローリングにしました。畳のスペースを4.5畳ほど残し、リビングルームの中一段段差を付けて和室に。普段は障子をあけて開放感を見せ、和室スペースを使う時やリビングに来客時は障子を閉めてプライベート空間にすることができます。
まとめ
リノベーションとリフォームは、国が定めた明確な定義はありませんが、それぞれを扱う会社の得意分野、不得意分野があります。リフォームを得意とする会社にリノベーションを依頼しても満足のいく結果にはなりませんし、家のリフォームがしたくてもリノベーションを専門とする会社に依頼しても費用が割高になるだけです。
それぞれの相違点を把握し、リフォームなのかリノベーションなのかを検討したうえで、それぞれが得意な会社に頼むと間違いはありません。
コメントを残す