
2003年から住宅金融支援機構と民間金融機関が提携してスタートした住宅ローンが「フラット35」です。その最大の特徴は金利が固定型ということで、返済期間中ずっと同じ金利で返済を継続できることは、利用者にとっては大きなメリットです。
ここでは、これからマイホームをもつために住宅ローンの選択でお悩みの方のために、フラット35の仕組みと、固定金利以外のメリットやデメリット、民間住宅ローンとの違いなどについて細かく調査し解説しています。フラット35の利用に向いている人についても紹介しているので、是非参考にしてください。
目次
フラット35の仕組み
住宅ローンというものは他のローンとは異なり、数十年単位で長く返済が継続することから、低金利を固定することは金融機関にとっては大きなリスクを伴います。
民間の金融機関では、長期の固定金利で住宅ローンを提供することはほぼ不可能となっていますが、フラット35ではそれを可能にしています。
金融機関がフラット35(長期・固定金利の住宅ローン)を実行。
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金融機関は住宅ローンで融資を実行後、住宅ローン債権を住宅金融支援機構に譲渡。
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住宅金融支援機構は、譲渡された住宅ローンの債権を担保目的で信託銀行などに信託する。
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信託した住宅ローン債権を担保に、住宅金融支援機構は住宅金融支援機構債券を発行する。
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住宅金融支援機構債券を投資家が購入し、代金を住宅金融支援機構が受け取る。
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住宅金融支援機構が受け取った代金を、住宅ローンを実行した金融機関に住宅ローン債権の買取代金として支払う。
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住宅ローンの利用者は、金融機関に住宅ローンの元利金を返済する。
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金融機関が、住宅金融支援機構へ利用客からの返済金を引き渡す。
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住宅金融支援機構が、投資家に発行した住宅金融支援機構債券の元利払いを行う。
上記に示した流れが、長期固定金利を実現できるフラット35の仕組みとなっています。フラット35という住宅ローンは、最寄りの金融機関で実行されていますが、住宅金融支援機構が中心となってお金を回しています。
住宅金融支援機構がリスクを伴う長期固定金利型の住宅ローンを取り扱いできるのは、フラット35の流れからも分かる通りに、「証券化」という仕組みを採用することにより資金調達をしているからです。
その名の通りに、最長で35年のローンを組むことが可能で、もし途中で金利が上昇しても金利は固定なので心配することはありません。
フラット35の融資限度額は100万円から8,000万円までで、建設費、または購入費用の10割までとなっています。
フラット35のメリット・デメリット
ご紹介してきた通りに、フラット35は全期間固定金利型の住宅ローンであり、それが大きなメリットになっていますが、その他にもメリットはいろいろあり、デメリットも存在します。
フラット35のメリット
借入時のメリットとして、個人事業主の方でも借入れがしやすくなっていて、保証料も必要なく、団体信用生命保険の加入が強制ではないという点が挙げられます。
もちろん、他の住宅ローンと同様に、利用するには審査が必要ですが、一般的に会社員よりも信頼度が低く査定される個人事業主も審査に通りやすくなっていることは、対象者の方々にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
返済時のメリットとしては、固定金利はもちろんですが、繰り上げ返済の手数料がかからないことは、早期に返済を終えたい方たちにとってはかなり嬉しいポイントです。
フラット35のデメリット
フラット35では、住宅の技術基準が厳しく定められていて、物件の審査が必要になるところが、メリットにもなりデメリットにもなります。
技術基準が厳しいということは、高性能で安心して暮らせる家に住むことができることになりますが、厳しい検査をパスするためには、建築コストがどうしても割高になってしまいます。
さらに、フラット35では建築費用以外の諸費用の借入は不可となっているため、十分な頭金を用意しておく必要があります。
返済に関するデメリットとしては、固定金利ということで、金利が下がっても返済額は下がらなく、変動金利よりも当初の金利が高めに設定されている点です。
フラット35の利用が向いている人
このように、メリットもあればデメリットもあるわけですが、やはり最後まで金利の上昇を気にしないで返済を続けたいという方には、フラット35は魅力的な住宅ローンです。
また、収入が安定しないために、他では住宅ローンが組みづらい方や、健康に何らかの心配があって団信生命保険の加入が難しい方たちにとっては、フラット35は救世主となります。
民間住宅ローンとの違い
フラット35 | 民間住宅ローン | |
---|---|---|
金利タイプ | 固定金利 | 変動金利や固定期間選択型から選択可能 |
保証料 | なし | なし~借入額の約2% |
団体信用生命保険 | 任意 | 必須 |
繰り上げ返済手数料 | 無料 | 無料~数万円 |
住宅の技術審査 | あり | なし |
保証人 | 不要 | 原則不要 |
借入時の手数料 | 金融機関により数万円~借入額の2%程度 | 金融機関により数万円~借入額の2%程度 |
審査の厳しさ | 年収基準を満たせばOK | 収入の安定度なども審査される |
上記は、フラット35と民間の住宅ローンの違いをまとめた表です。
やはり最も注目すべき点は、フラット35は固定金利しか選択できないのに対して、民間の住宅ローンでは、いくつかの候補から金利のタイプを選択できるところです。
保証料に関しては、フラット35ではかかりませんが、民間の住宅ローンでは固定金利の方が変動金利よりも高めに設定されている点に注意して、ローンを借りる際に保証料を支払うか、毎月のローンの金利に上乗せするかを、トータルで計算して決める必要が出てきます。
繰り上げ返済手数料に関しては、民間の住宅ローンでも無料にしているところもあるので、早期返済を計画している方は、その点にも注目して借入先を選択しましょう。
団体信用生命保険は、フラット35では加入しなくても利用可能で、その場合は金利が0.2%低くなり、健康に不安を抱える方にとってはメリットとなりますが、未加入のリスクもきちんと考えて決断しなければいけません。
審査の厳しさに関しては、民間の住宅ローンでは、年収にももちろん基準は設けていますが、収入の安定度が審査基準の重要なポイントとなるケースが多く、高収入を得ていても収入が安定しない自営業者以外にも、転職したての方も審査に通りづらくなっています。
フラット35では、年収基準を満たせば借入れができるようになっていて、年間合計返済額が年収に占める割合(総返済負担率)が、年収400万円未満であれば総返済負担率は30%以下、400万円以上であれば35%以下に定められています。
民間の住宅ローンでは、勤続年数や雇用形態も職種も、審査に通るための大事な要素となりますが、フラット35ではその点を心配しなくてもいいようになっています。
まとめ
フラット35は、民間の住宅ローンでは提供することが難しい長期の固定金利を実現した住宅ローンです。
最長35年で全期間固定金利ということ以外にも、個人事業主などの収入が安定しなくてローンが組みづらい人でも審査に通りやすいなどの様々なメリットがありますが、変動金利よりも最初の金利が高めに設定されていたり、金利が下がっても返済額は下がらないなどのデメリットも含んでいます。
他の住宅ローンと同様に、メリットばかりではありませんので、自分に向いているかどうかをしっかり検討して、利用に踏み切るようにしてください。
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