
街を一望できる景色の良さや防犯性の高さ、さらにステータスの象徴にもなる高級感のある佇まいとイメージにより、多くの人に支持されているタワーマンション。
常に先進的でモダンな住居として存在感を示していますが、他の建物と同様に、老朽化による建物の寿命問題を避けることはできません。
今回は、そんなタワーマンションの寿命や資産価値、売却にまつわる情報について紹介していきます。
目次
タワーマンションの耐用年数と寿命の違い
はじめに、タワーマンションの法定耐用年数と寿命の違いについてお伝えします。
ニュアンスとしては似ている2つの単語ですが、それぞれの意味はまったく異なっています。
タワーマンションの法定耐用年数とは
鉄筋コンクリートで建造されたタワーマンションには、法定耐用年数が設定されています。
法定耐用年数とは、物件の資産価値を正確に算出するために必要な指標のことであり、減価償却費の計算にも使用されます。
タワーマンションは一般的に、年月の経過とともに資産価値が減少し、最終的には法律で定められた耐用年数(47年)に到達すると、税務上ではそのマンションの価値はゼロとみなされます。
従って、法定耐用年数はあくまでも減価償却計算のための指標であり、法定耐用年数を過ぎたからといって住めなくなるというわけではありません。
タワーマンションの寿命とは
タワーマンションの寿命は、鉄骨の経年劣化や排水管の劣化・排水タンクの劣化、耐震性、市場価値等の経済的な要素について考慮し判断されます。
一般的にタワーマンションは、適切なメンテナンスを行えば法定耐用年数を超えても長期間にわたって居住できることが知られており、建物の寿命は100年以上とされています。
タワーマンションの寿命は今後さらに伸びることが期待
建築技術の進歩とメンテナンスの質の向上により、タワーマンションの寿命は既に100年以上を実現し、大規模修繕を施さなくても建物を100年以上維持することができます。
基準強度としては、通常のコンクリートが24N/mm2(ニュートンパー平方ミリメートル) なのに対し、100年コンクリートは30N/mm2(ニュートンパー平方ミリメートル)です。
この数値は、通常のコンクリートが1㎡あたりの耐荷重量が約2,400トンですが、100年コンクリートは1㎡あたり約3,000トンもの重さに耐えられる計算になります。
さらに、将来的には200年・500年コンクリートと、100年コンクリートを大幅に超える強度を持つ耐久性に優れたコンクリートが開発される予定で、その進化は止まりません。
また、強度だけでなく、特殊な加工や材料によって素材の質にも工夫されており、水にさらされても表面の強度が維持されるといった特性が付随されたコンクリートも開発されています。
このようなコンクリート技術の進化により、タワーマンションの耐用年数はさらに延びることが期待でき、将来的には100年以上の耐用年数の物件が一般的になるでしょう。
とはいえ、100年以上の寿命を維持は、コンクリートなどの素材の強度に頼るだけでは実現しません。
適切なメンテナンスを行い、日々の管理で建物のコンディションを整えることも重要であり、計画的な大規模修繕を行える財務管理体制も大切になります。
タワーマンションの建物の寿命を左右するポイント
タワーマンションは基本的には強度が高く、通常のマンションよりも老朽化しにくいと言われています。
しかしながら物件による個体差はあり、置かれた条件によって寿命の長短が決まる側面があります。
タワーマンションの建物の寿命を左右するポイントは以下の4つです。
立地
タワーマンションの寿命は、立地の条件によって大きく左右されます。
例えば、周囲に高いビルがある場合は日照不足になり、湿度上昇などの問題が起こりやすくなってしまう一方、海の近くの場所では、潮風の影響を受け配管が腐食してしまうのです。
物件の耐震基準
中古物件の場合は、建造された時期によって耐震基準が異なっていることも寿命に関係してきます。
新旧耐震基準の違いは以下になります。
【新耐震基準】
1981年6月1日以降に建てられた住宅に適用され、震度7相当の地震に対して倒壊しない強度を想定されている基準。
【旧耐震基準】
1981年5月31日以前に建てられた住宅に適用され、震度5相当の地震に対して倒壊しない強度を想定されている基準。
耐震基準は建築基準法の改正に伴い定期的に見直されてきたため、新耐震基準が適用されて建てられたタワーマンションの方がより高い安全性で設計されています。
さらに旧耐震基準の物件は40年以上の年数が経過しているため、基本的には新耐震基準の物件よりも経年劣化が進んでいると考えた方がよいでしょう。
予算の許す範囲であれば、中古物件であっても新耐震基準の物件を選択することを推奨します。
メンテナンスなどの管理状態
日常的な手入れやメンテナンス、必要な修繕が適宜行われているなど、管理状態にもタワーマンションの寿命は左右されてきます。
新築のタワーマンションでは、定期的なメンテナンスを行うことで建物の劣化を予防している場合が多く、長期的な修繕計画も立てられているため、建物の寿命が延びやすい傾向にあります。
一方、築年数の経った中古物件では、メンテナンスは行っているものの長期的な修繕計画が存在しない場合もあり、劣化が進み不具合が生じてから修繕が施されるケースもあるため注意が必要です。
物件の購入前には自身で修繕計画の有無を調べ、それでも不安な場合は不動産会社に問い合わせて修繕履歴と修繕計画を確認するようにしましょう。
修繕履歴では、これまで行われた修繕について、どのような不具合に対してどういった修繕を施したかの情報を得ることができます。
メンテナンスなどの管理状態
タワーマンションの寿命、とくに耐久性は外壁に使用されたコンクリートの強度によって左右されます。
最近のタワーマンションは、100年コンクリートと呼ばれる耐久性の高い性質のコンクリートを使用して建造されており、外壁のコンクリートの強度を問題視する必要はありません。
しかし、築年数の経過した中古物件などでは、品質の低いコンクリートが外壁に使用されているケースもあり、経年劣化によってひび割れが生じていることもあります。
ひび割れは将来的に大きく崩れる危険性がありますし、修繕の必要が出て高額の修繕費が必要になる可能性もあるため注意しましょう。
タワーマンションに使用されたコンクリートの種類が知りたい場合は、建物の設計図をチェックすることで確認することができます。
タワーマンションの寿命が近くなった時に起こりえることと対策
タワーマンションを購入し、一定の築年数の間居住した場合、寿命に近づいてしまうことは避けられません。
では、タワーマンションが寿命に近づくと、居住者にはどのような影響があるのでしょうか。
タワーマンションの寿命が短くなった時に起こりえること
修繕費が高くなる
タワーマンションは築年数を重ねて寿命が近づくと、経年劣化などによって老朽化する箇所が増え、修繕費が高くなってしまう可能性があります。
よくあるのが、設備関連が故障や劣化によって機能しなくなってしまう問題です。
例えば、配管が老朽化して内部に詰まってしまう、コンクリートがひび割れて雨漏りや保温性の問題につながってしまうケースなどです。
こうした問題は生活上の不便、または危険にもつながってしまうため、早急に修繕しなければなりません。
また、タワーマンションの管理費や修繕費は数年ごとに見直され、基本的には築年数を重ねるごとに上昇していくことも覚えておく必要があるでしょう。
資産価値が値崩れを起こす可能性がある
タワーマンションは値崩れしにくい物件だと言われ投資にも利用されていますが、必ずしもそうではなく、築年数を重ねるごとに資産価値が下がってしまうケースも存在します。
とくにタワーマンションの資産価値に直結するのは立地条件です。
駅や商業施設などの近くや、ニーズがあるのに他にタワーマンションが建造されない場所などは、資産価値を維持することができるでしょう。
また、減価償却の視点においては、法定耐用年数が47年を超えるとタワーマンションの建物自体の価値がゼロになると考えられている点にも注意が必要です。
法定耐用年数を用いた計算は経年劣化などではなく、あくまでも損益計算や税務処理に使われる計算ではありますが、法的には建物の資産価値は下がっていると認識しておく必要があるでしょう。
建て替えの話が出たら早めの売却を考えるのもひとつの手段
現在利用されているタワーマンションは、1997年の建築基準法改正以降に建てられた物件が多く、老朽化によって建て替えられた物件はまだ存在しません。
しかし、通常のマンションと同じく、将来的に老朽化による建て替えが必要になる可能性は高いため、建て替えの話が出た場合は、寿命を迎える前に売却するのも1つの方法だと言えます。
引っ越しや建て替えの手続きは煩雑で面倒なものですし、定年後に物件の寿命が切れてしまった場合、退職金や貯金を投じなければならない可能性もあります。
以上の理由から、築年数を重ねて管理組合の総会などで物件の寿命や建て替えについての話題が出た際は、中古物件としてまだ価値のある段階での売却の検討も考えておくと良いでしょう。
中古タワーマンションを購入する際は築年数に注目
中古タワーマンションの購入を検討している場合、資産価値の低下と販売価格のバランスを考えると、築20年以上の築年数の物件が購入の狙い目です。
タワーマンションの価格は、築10年で新築の7割から8割ほどまで下落する傾向にあり、築25年から築30年の築年数で底値に到達します。
物件によっては新築の半額以下の価格になることもあり、その上でさらに価格交渉も可能なため、大幅な割安価格で購入できるのが大きなメリットです。
また、中心街や駅周辺エリアなどの立地により、資産価値の安定している物件であれば将来の値崩れのリスクが低くなるため、購入の判断材料にできます。
さらに、新耐震基準が採用されたのは1981年6月1日からなので、旧耐震基準で建造された築40年以上の古い物件は、耐震性の問題や将来的に修繕費が必要になることが予想できます。
上記の理由を考慮すると、築20年から築30年の間の築年数の物件が、中古物件購入の目星となるでしょう。
まとめ
タワーマンションにも寿命があり、老朽化によって不具合や故障した建物や設備は、しっかりと修繕する必要があります。
中古タワーマンションを購入する際は、「立地」「物件の耐震基準の時期 」「メンテナンスなどの管理状態 」「メンテナンスなどの管理状態 」から寿命を判断すると良いでしょう。
また、寿命の他に法定耐用年数と呼ばれる概念がありますが、こちらは損益計算や税務処理に使うための法的な数字ですので、建物の老朽化や劣化について表しているわけではない点に注意してください。
新築タワーマンションだと価格が高くて手を出しにくいとお考えの方は、建物の寿命と資産価値の視点から、適切な築年数の中古物件の購入を検討してみてはいかがでしょうか。
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