
タワーマンション購入時に、購入価格とともに注目したいのが管理費と修繕積立金です。
タワーマンションの修繕積立金は、分譲時の額のまま据え置きではなく、値上げされることが多いのをご存知でしょうか。
この記事では、タワーマンションの修繕積立金の相場、一般のマンションより高い理由、値上げの理由とタイミングを解説します。
目次
タワーマンション購入後に支払う費用
マンションを購入すると毎月または毎年、定期的に支払う費用には、以下があります。
【毎月支払う費用】
- 住宅ローン返済額(住宅ローンを利用する場合)
- 管理費
- 修繕積立金
- 駐車場使用料(駐車場を利用する場合)
【毎年支払う費用】
- 固定資産税・都市計画税
住宅ローンを利用してタワーマンションを購入した場合、毎月住宅ローンの返済が必要です。
また、「管理費」および「修繕積立金」、駐車場を利用する場合は「駐車場使用料」を、管理組合に毎月支払います。
さらに、地方自治体に固定資産税および都市計画税を毎年支払う義務があります。
タワーマンションの修繕積立金とは
管理組合に支払う費用の内、「管理費」および「修繕積立金」は、マンションの所有者から構成される管理組合が主体となって共有部分の維持管理や修繕を行うに当たって必要となる費用です。
一戸当たりの支払額は、所有する住戸の専有面積に応じて按分されます。
管理費と修繕積立金は合計額を毎月支払うことが多いですが、それぞれの使用用途は異なります。
修繕積立金とは
修繕積立金は、以下のように居住者が共同で使う「共用部分」の修繕に使われる費用です。
【共用部分の例】
- 廊下
- 階段
- エレベーター
- エントランス
- ゲストルームなどの共用施設
これらの共有部分などを、何年かに一度行う大規模な修繕(「大規模修繕」)に備えて積み立てておく費用が「修繕積立金」と言うわけです。
タワーマンションでは通常「長期修繕計画」が定められており、この計画に基づいて、修繕積立金の月額が決定されます。
大規模修繕は具体的に何をするのか
「大規模修繕」の主な目的は、マンションの防水性を高め、必要に応じて設備を交換し、外観を良くすることです。
具体的には、外壁塗装、屋根防水、排水管洗浄、給水設備の交換、エレベーター等設備の更新などの内、1つまたは複数の修繕が一度の大規模修繕で行われます。
たとえば、外壁は壁の亀裂やタイルの剥がれなどを「打診検査」でチェックし、補修や塗装を行うことで、耐久性や防水性が高まり、外観も美しくなります。
屋上は、防水層を補修して防水シートを張り替えるなどして、防水性を高めます。
タワーマンションの修繕積立金が一般マンションより高い理由
タワーマンションの修繕積立金は一般のマンションより高いと言われていますが、相場はどれくらいなのでしょうか。
また、タワーマンションの修繕積立金が高い理由は何でしょうか。
タワーマンション修繕積立金の相場はいくら?
修繕積立金の額は、修繕工事が必要となる時期、修繕工事の内容、概算費用などを記した「長期修繕計画」に基づき設定されます。
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、20階建以上の新築および中古マンションの現在の月額修繕積立金の平均は、一戸当たり13,699円。
マンション全平均(11,875円)と比べると、タワーマンションの修繕積立金相場は約15%高い水準となっています。
【一戸当たり月額修繕積立金平均額】
マンションの階層 | 月額修繕積立金 戸当たり平均額 |
月額修繕積立金 ㎡当たり平均額 |
---|---|---|
3階建以下 | 10,340円 | 141円/㎡ |
4 ~ 5階建 | 13,631円 | 205円/㎡ |
6 ~ 10階建 | 12,078円 | 168円/㎡ |
11 ~ 19階建 | 10,872円 | 147円/㎡ |
20階建以上 | 13,699円 | 167円㎡ |
全平均 | 11,875円 | 164円/㎡ |
出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」
ただし、この額はあくまで調査時点での平均です。
タワーマンションは築浅物件が多いのですが、後述するように、修繕積立金は築年が古いほど値上げされる可能性が高まるので、今後平均額が上昇していく可能性はあります。
タワーマンションの修繕積立金が高い理由
タワーマンションの一戸当たりの修繕積立金が一般のマンションより高くなってしまう主な理由は、設置されている設備の種類やその質です。
建物の外壁の修繕には地上から足場を組んで行うのが一般的ですが、タワーマンションのような高層建物の場合、最上階まで足場を組むことは技術上できません。
このため、建物の上部からクレーンで釣り上げたゴンドラなどが必要となり、その分コストが高くなってしまうのです。
また、タワーマンションには、非常用エレベーター、非常用発電機、スプリンクラー、防災センター、ヘリポートなど、法律で設置が義務付けられている設備があるうえ、高速エレベーター、高層階専用エレベーターなど、一般のマンションにはない設備も設置されています。
さらに、タワーマンションならではの充実した設備(空調が備わったラウンジ、フィットネスルーム、プール、シェアオフィス、池を備えた中庭など)や、タワーマンションの外壁や内装に使われる高級な材料も、修繕費が高くなる一因と言えるでしょう。
修繕積立金は値上げされることが多い
タワーマンションの修繕積立金の金額は、将来的に値上げされることも多いです。
ここでは、修繕積立金が値上げされてしまう原因について紹介していきます。
タワーマンション修繕積立金の設定方法
修繕積立金の額の設定方法には、長期修繕計画で計画された修繕費を毎月均等に積み立てる「均等積立方式」と、当初修繕積立金の額を低く設定し、定期的に値上げする「段階増額積立方式」の2種類があります。
国土交通省は、安定的な修繕費の確保のために「均等積立方式」が望ましいとしていますが、実際のところ新築マンションは「段階増額積立方式」を採用しているケースがほとんどです。
また、新築分譲時に「修繕積立基金」という一時金を徴収するケースも増えています。
修繕積立金の額は新築分譲時が一番低い
新築分譲時に分譲会社が修繕積立金の額を設定するのが一般的ですが、この時点では金額が低めに設定されていることが多くあります。
タワーマンションは管理費も高額となる傾向にあるため、販売しやすくするために当初の修繕積立金を低く設定して管理費と修繕積立金の合計額を抑え、その後修繕積立金の額を定期的に上げていくという販売戦略を取っているのです。
また、修繕積立金の値上げ予定がなくても、修繕積立金が足りなくなり、後から修繕積立金の値上げや一時金の徴収をせざるを得なくなるケースもあります。
タワーマンション修繕積立金が値上げされるタイミング
値上げを前提とする「段階増額積立方式」では、5年ごと、つまり築5年、10年、15年、20年、25年、30年のタイミングで値上げされることが多いです。
マンションの大規模修繕を行う周期は、国交省のガイドラインでは12年前後が目安。
タワーマンションによって異なるので一概には言えませんが、実際はおおむね15年前後が多いと言われています。
なお、外壁の調査に関しては、建築基準法により少なくとも10年ごとに行うことが義務付けられています。
特に築後30年程度になると、給排水設備の交換など大がかりな大規模修繕が必要となりますから、値上げの可能性はかなり高いと言えるでしょう。
修繕積立金が値上げされるその他の理由
マンションは予め立てた「長期修繕計画」に基づいて修繕積立金を集めることが基本です。
ただこれまで、「長期修繕計画」がきちんと立てられていなかったために修繕積立金が足りなくなり、突然修繕積立金が値上げされたり、一時金が徴収されたりする例があったため、問題となっていました。
タワーマンションは2000年前後に建てられたものが多く比較的新しいので、きちんとした長期修繕計画が立てられていることが多いですが、計画外の修繕が必要になって修繕積立金が値上げされる可能性はもちろんあります。
特に、タワーマンションの大規模修繕の実施例はまだ少なく、「平成30年度マンション総合調査結果」(国土交通省)によると、20階建以上のマンションの内6割はまだ大規模修繕を行ったことがありません。
突然修繕積立金が値上げされてしまう可能性もあるため、資金にはある程度の余裕を持っておく必要があると言えるでしょう。
タワーマンション購入時に注意すべきこと
ここまで、修繕積立金の相場と値上げの可能性についてご説明してきました。
ではタワーマンションを購入するに当たって、修繕積立金に関して特に注意すべきポイントは何でしょうか。
修繕積立金の額と値上げの予定
まず現在の修繕積立金の額を確認し、設備や築年から見て妥当な水準にあるか確認しましょう。
修繕積立金の支出額を抑えるためには、豪華すぎるエントランスや自身が必要としない設備や過度に豪華な共用部分を持つタワーマンションを避けるのも1つの方法です。
将来の値上げの予定や可能性については、まず「均等積立方式」と「段階増額積立方式」のどちらの方式が採用されているのか確認します。
5年ごとに値上げされることが多い「段階増額積立方式」の場合は、たとえば10~30年後にどれくらいの額になるのか、値上げ後の額を自身が払える見込みがあるのか、検討しておきましょう。
なお、「段階増額積立方式」を採用している場合や、修繕時に一時金を徴収する方式では、増額または徴収する際に区分所有者間の合意が得られず、修繕積立金が不足する例があることにも注意が必要です。
修繕積立金が不足すると、タワーマンションに必要な修繕が実施できず、資産価値の下落につながります。
また、「長期修繕計画」は計画通りにいくとは限りません。
「均等積立方式」であっても、計画していた以上の修繕が必要となって修繕費が上昇したり、修繕時期が予定より早まったりして、修繕積立金が足らなくなることもあります。
「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(国土交通省)によると、長期修繕計画の計画期間全体における修繕積立金の平均額の目安(機械駐車場を除く)は、タワーマンション(20階以上のマンション)の場合、338/㎡とされており、80㎡で計算すると月額27,040円です。
この目安額は、「長期修繕計画作成ガイドライン」にほぼしたがって作成されている長期修繕計画の336事例を収集・分析した上で、計画期間全体に必要な修繕工事費総額を、計画期間で積み立てる場合の修繕積立金の㎡当たり月額を示しています。
この平均額の目安(338/㎡)は、前述した「平成30年度マンション総合調査結果」による20階建以上マンションの現在の月額修繕積立金の平均額(167円/㎡)よりかなり高い水準です。
このことは、タワーマンションの修繕積立金は今後の値上げが予定されているケースが多いこと、現時点で、大規模修繕に必要な修繕積立金が十分に確保されているマンションばかりではないことを示していると言えるでしょう。
長期修繕計画や修繕履歴
タワーマンションの購入を検討するに当たっては、そのマンションの長期修繕計画を確認しましょう。
なお、マンションに使われる資材や設備の変化、修繕技術の向上など、時代によって適切な修繕の内容が変化することから、長期修繕計画は定期的に見直されるべきものです。
2回目以降の大規模修繕に向けた長期修繕計画が適切に見直されてこなかったために、修繕積立金が十分に積み立てられておらず、修繕費が不足するといったケースもあります。
中古マンションであれば、修繕履歴も大切です。
長い間修繕されておらず十分な積立金がない場合は、修繕積立金の値上げや一時金を徴収される可能性が高いと言えます。
長期修繕計画を閲覧して、きちんと計画されているか、計画されている修繕に向けて必要な費用が積み立てられているか、よく確認しましょう。
管理組合が機能しているか
管理組合が機能しているかどうかを判断するには、長期修繕計画に基づいた修繕積立金が設定されているか、修繕積立金の未収金がないか、などがチェックポイントです。
また、管理組合の総会や理事会の議事録を閲覧し、長期修繕計画や修繕積立金の見直しが行われているなど、大規模修繕について管理会社に任せきりにしていないか、その他どんな問題が議題に上がっているのか確認することも大切です。
まとめ
修繕積立金は、タワーマンションの資産価値を長期間にわたって維持していくのに欠かせないものです。
安全に直結するため、安ければいいというものではありません。
ただ、住宅ローンの返済と異なり、修繕積立金は、マンションを所有している限り一生涯支払うものです。
30年後など、老後に年金生活になった時に修繕積立金が予想外に値上げされて、家計の収支を圧迫してしまうこともあり得ます。
将来タワーマンションを売りに出すにしても、月々の修繕積立金の額が高すぎるマンションは、売れにくくなることが予想されます。
購入前に、修繕積立金および中古の場合は修繕履歴について、よく調べておくことが大切です。
なお、長期修繕計画や修繕履歴、修繕積立金の額や値上げの可能性の分析には、やや専門的な知識が必要とされるため、不動産会社に相談することをおすすめします。
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