タワーマンション高層階のメリット・デメリット | 購入検討時のチェックポイントも解説

眺望の良さが人気のタワーマンション高層階。

居住目的のみならず、資産としてタワーマンション高層階を購入する国内外の投資家も多くいます。

では、そんなタワーマンション高層階のメリット・デメリットは何でしょうか。

この記事では、タワーマンションの概要と人気のあるタワーマンションの特徴、タワーマンション高層階の費用を抑える方法や、高層階の部屋をチェックする時のポイントをご紹介します。

タワーマンションとは?

建築基準法上、高さ60m超の建物は「超高層建築物」とされています。

タワーマンションの定義は法律で決まっているわけではありませんが、60mの高さのマンションが20階建くらいになることから、一般的には20階建て以上の共同住宅を「タワーマンション」と呼ぶことが多いです。

日本で最も高いタワーマンションは地上55階建て(住居フロア最高階は46階)の「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」(東京都港区)であり、高さは255.5mと、東京都庁の高さを数メートル上回っています。

日本におけるタワーマンション第1号は、1976年に住友不動産により建築された21階建ての「与野ハウス」(埼玉県さいたま市)と言われています。

その後1980年代までタワーマンションは年間1~2棟しか建築されませんでしたが、1990年代に増加し始め、2000年代に東京湾岸部を中心に急増しました(グラフ参照)。

タワーマンションの増加を後押ししたのが、国や自治体による規制緩和です。

バブル崩壊後長らく低迷していた不動産市場を活性化させる目的もあって、「都市再生」や「都心回帰」などの言葉を旗印に、建築に関する規制緩和が推進されました。

はじめに行われたのが、建築基準法の改正による容積率(※)の緩和です。

1997年にマンションの共用部分(共用廊下など)が容積率不算入となり、2002年には住居系の容積率が大幅に緩和されました。

※容積率は敷地面積に対する建物総床面積の割合。たとえば、敷地面積が100㎡で容積率が500%なら、最大500㎡の延床面積を持つ建物を建築可能。

また、国は容積率等を緩和する様々な制度、「高層住居誘導地区」、「総合設計」、「特定街区」、「高度利用地区」、「空中権の移転」などを導入しました。

たとえば1997年に導入された「高層住居誘導地区」は、容積率の緩和や日影規制の適用除外を含む規制を緩和し、高層住宅(タワーマンション)の建設を誘導する制度です。

2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の直後はタワーマンションの供給量が落ち込んだものの、2020年東京五輪(実際に開催されたのは2021年)に向けて再び増加し、2022年末のタワーマンション累積棟数は、全国で約1,400棟(約38万戸)に上ります。

全国46都道府県中、タワーマンションのストックを有するのは38都道府県。

タワーマンションが最も多い東京都は全国シェアの約3割を、首都圏全体では全国の約半分を占めています。

どんなタワーマンションが人気なのか

ひとえにタワーマンションと言っても、その種類は膨大で、中でもどんなタワーマンションが人気を集めているのでしょうか。

そして、避けた方がよいタワーマンションはあるのでしょうか。

立地の良いタワーマンション

タワーマンションは立地の良いエリアに建てられることが多いため、通勤通学に便利で「職住近接」をかなえられる点が人気の理由の一つです。

当初タワーマンションは、東京都心の再開発地域や工場跡地が多い湾岸エリアに数多く建てられました。

また、市街地再開発事業による駅前再開発に伴い、東京郊外の駅周辺や地方都市の新幹線停車駅などのターミナル駅周辺などでもタワーマンションが増えつつあります。

頑丈で設備が充実しているタワーマンション

建物が頑丈で設備が充実しているタワーマンションは人気があります。

タワーマンションの建物は「制振構造」や「免震構造」などが採用されて建てられていることが多く、高い耐震性能と居住性の両立が可能です。

また、タワーマンションは前述した建築基準法上の「超高層建築物」にあたるため、安全上必要な構造方法等に関して国土交通省の認定を受ける必要があります。

タワーマンションは一定水準の安全性が確保されていると言ってよいでしょう。

タワーマンションはホテルのように充実した共用施設も魅力です。

ゲストルーム、キッズルーム、共用ラウンジの他、フィットネスルームやコワーキングスペースを備えているタワーマンションがある他、宅配便やクリーニングの受け取り、タクシーの手配などを含むコンシェルジュサービスを提供しているタワーマンションもあります。

投資対象資産としてのタワーマンション

タワーマンションは居住目的のみならず、投資対象資産としても人気です。

立地の良さ等から賃貸・転売しやすく資産価値が高めで、投資効果が大きく見込めるでしょう。

このため、タワーマンションの購入者には、自分は居住せず購入後すぐに賃貸に供する国内外の投資家も多くいます。

購入を避けた方がいいタワーマンションは?

ここまで人気の高いタワーマンションの特徴をご説明しました。

では、購入を避けた方がいいタワーマンションはあるのでしょうか。

以下のようなタワーマンションは、購入するにあたって慎重に判断しましょう。

  • 駅から離れた場所にある
  • 築年が古いまたは空室が多い
  • 周りに高層建物が建っている

タワーマンションの建築エリアは当初都心や湾岸エリアに集中していましたが、徐々に郊外の駅前や、駅からやや距離があるエリアにも増えています。

駅から離れた場所にあるタワーマンションは、駅前にあるタワーマンションに比べると、不動産市場の状況に需要が左右されやすい点に注意が必要です。

特に、駅近くに競合物件がある、または建てられる予定の場合は、賃貸や転売がしづらくなる可能性もあります。

築年が古いまたは空室が多いタワーマンションは、管理費や修繕積立金が高くなりがちです。

空室が増えすぎると、将来必要な大規模修繕の積立金を十分確保できない可能性も出てきます。

また、タワーマンション周辺に同じような高層の建物が建つ計画がある場合は、眺望の良さを期待してタワーマンションを購入するのは慎重になった方が良いでしょう。

タワーマンションの高層階は何階から?

実は、マンションの低層階、中層階、高層階などの区別には決まったルールがなく、運営者によって独自に決定されています。

下記の表は、一般的な区分です。

【マンションの高さ別低層階・中層階・高層階】

一般的には、20階建のタワーマンションなら16階以上、30階建のタワーマンションなら21階以上が高層階と呼ばれます。

一方、50階建以上のマンションであれば、15階でも低層階と呼ばれることもあるなど、タワーマンションの中でも建物の高さによって「高層階」と呼ばれる階層は変わります。

タワーマンション高層階のメリット

ここまで、タワーマンションの特徴を見てきました。

タワーマンションの中でも需要が高い高層階の住戸には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

高層階は眺望や日当たり・風通しが良い

タワーマンション高層階は眺望が良く開放感があることが、最大のメリットと言ってよいでしょう。

立地によっては夜景も楽しめるうえ、周辺に高層建物が林立していない限り、高層階は採光も風通しも優れています。

高層階は騒音が少ない

タワーマンションの高層階は地上から距離があり、車の騒音や地上の話し声などは聞こえにくく、比較的静かに暮らせるメリットがあります。

ただし、高層建物であるがゆえに住戸と住戸の間の壁は比較的薄く作られていて、隣室の生活音等が聞こえる場合があります。

高層階は虫が室内に入ってこない

タワーマンション高層階は風が強いため、蚊を始めとする虫があまり飛んでいません。

窓を開け放していて過ごしても、虫が室内に入り込んで悩まされる心配が少ないのはメリットの一つです。

高層階は防犯性に優れプライバシーを保てる

タワーマンションは一般的にセキュリティがしっかりしています。

二重・三重のオートロックシステムや警備会社等と連携した24時間有人管理などがあるところも多いです。

また、タワーマンションの高層階は、バルコニーからの侵入が困難であることから空き巣被害が起きにくいです。

開口部方面に同じくらいの高さの建物がなければ、外から室内が見られる心配が少なくプライバシーを保ちやすいという点も大きなメリットでしょう。

高層階は一般的に資産価値が高い

タワーマンションの居住者および購入検討者を対象としたアンケート調査(アットホーム株式会社)によると、半数近くの人が20階以上の高層階に住みたいと答えています。

同じタワーマンションの住戸の中では、一般的に高層階の住戸の方が需要が高く、賃貸・売却しやすいなど資産価値が高い傾向があるのです。

タワーマンション高層階のデメリット

タワーマンション高層階には上述したような様々なメリットがありますが、一方でデメリットもあります。

高層階は外に出るまで時間がかかる

タワーマンション高層階は、エレベーターの昇降時間が長く、朝の通勤通学時間帯はエレベーターを待つ時間が長くなる傾向があります。

通勤通学の時間帯はマンションの外に出るのに時間がかかり、特に高齢者や小さい子供のいる家族連れなどは、外出のハードルが若干上がってしまうでしょう。

高層階は災害時等に階段の上り下りが大変

地震などの災害時に停電等でエレベーターが止まってしまった場合、復旧するまで長い階段を上り下りしなければなりません。

特に、食料や飲料水などの重い荷物がある場合は、高層階まで階段を上るのは大変な労力を必要とします。

なお、地震発生時や強風時に、タワーマンション高層階は揺れが大きく揺れる時間も長くなりがちです。

高層階の部屋は夏暑すぎることがある

タワーマンションの高層階のメリットの一つであった日当たりの良さ。

実は開口部の向きによっては、夏は暑すぎて冷房が効きづらいことがあります。

特に最上階南向きの部屋は暑くなりやすい傾向があるうえ、高層階は風が強く、窓が開けられないことがある点に注意が必要です。

高層階は購入価格やコストが高い

最後に、タワーマンションは高層階ほど購入価格が高く、購入後に支払う固定資産税などの固定費も高くなる傾向があります。

購入価格が高いのは需要の高さを反映していると言えますが、自身が居住するにあたって価格に見合うメリットがあるかは、慎重に見極める必要があるでしょう。

また、投資対象資産として購入する場合は、購入価格に見合うリターンがあるか不動産市場の動向を分析することが大切です。

タワーマンション高層階の費用を抑える方法

購入価格、購入後の固定費いずれも高額となりがちなタワーマンション高層階ですが、少しでも費用を抑える方法はあるのでしょうか。

高層階には税制上のメリットがあった

タワーマンション高層階を、相続税等を節約するために購入するいわゆる「タワマン節税」が一時話題になりました。

相続税、固定資産税、不動産取得税等の計算の基となる固定資産税評価額は、各住戸の面積に応じて評価額が算出されています。

この評価額の算出で、同じ面積であれば高層階でも低層階でも同じ評価額となり、高額になりがちなタワーマンション高層階住戸を購入した場合、購入価格に比して税額は低く抑えられます。

つまり、タワーマンション高層階住戸を購入して現金を不動産という資産に換えることで、現金で持っているよりも(または他の種類の不動産よりも)相続税を抑えられ、タワーマンション高層階の購入は相続税対策に効果的であると言われてきたのです。

一方、国は「タワマン節税」に対する規制強化の動きを強めています。

2017年の税制改正では、固定資産税の「税額」計算上階層が考慮されることになり、固定資産税額は1階増すごとに約0.26%上昇。

若干ではありますが、高層になるほど税負担が増えることとなりました。

この改正は2017年4月以降に新築されたタワーマンションにのみ適用されます。

2017年の税制改正では、相続税の建物部分の税額の計算の基となる「固定資産税評価額」の評価法には変化がなかったため、相続税の税額には直接影響がありませんでした。

ただし、相続発生直前にタワーマンションを購入して相続後すぐに売却し、国税庁から「節税目的の購入」と見なされ追徴課税されたケースもあります。

今後もタワーマンションに対する課税は継続的に見直しがなされる予定なので、税制改正の動きを注視しておきましょう。

中古のタワーマンションを選ぶ

一般的に、新築物件よりも中古物件の方が、安く購入することができます。

新築にこだわらないのであれば、中古のタワーマンション高層階も含めて検討してみてはいかがでしょうか。

ただし、タワーマンションの立地が優れている場合や物件のクオリティが高い場合、高層階の場合など、条件が揃っている物件に関しては、新築当時より値上がりしている可能性があります。

また、大規模修繕の時期が近付いているタワーマンションは、管理費・修繕積立金が高く設定されていたり、または今後値上げの予定があったりする場合があるので、注意が必要です。

タワーマンションの最上階を避ける

タワーマンション高層階の費用を抑えるには、最上階の住戸を避けるのも一つの方法です。

タワーマンションは高層階に行くほど価格が高く設定されており、中でも最上階は、部屋の面積やバルコニーが広く作られていることが多いため、高額な価格で取引されています。

最上階でなくても高層階であれば眺望は楽しめますし、タワーマンションによっては中層階でも眺望がいい物件もあり、最上階であることにこだわりすぎず柔軟な選択をしましょう。

タワーマンション高層階の部屋をチェックするときのポイント

タワーマンション高層階の部屋の購入を検討する場合、どんなところに気を付けてチェックすればよいでしょうか。

タワーマンションの周辺環境をチェック

タワーマンションに限らず、不動産は現地を見ないと分からないことがたくさんあります。

購入を検討しているタワーマンション高層階がある場合は、現地に行って周辺環境などのチェックが必須です。

現地では、エリアの雰囲気、利便施設や店舗の有無などをチェックするほか、周辺に高い建物があるか、または開発計画がないか確認もしておきましょう。

周辺に高層建物があると、眺望や日当たりを妨げる可能性があるだけでなく、競合物件であればタワーマンションの市場性にも影響します。

また、自治体が提供するハザードマップなどで、浸水や液状化の心配があるエリアではないかもチェックしておきましょう。

エリア人口急増に伴い、最寄り駅が朝の通勤通学時間帯に混雑することも考えられます。

朝の混み合う時間帯に最寄り駅に行ってみて、現時点での混雑具合を確認しましょう。

過去には、タワーマンションが多数建設されたエリアの最寄り駅で、駅の利用者急増に対応するためホーム増設等の対応が行われた例もあります。

タワーマンション全体の設備をチェック

共用ラウンジなどのマンション全体の設備、広さや利用方法など、タワーマンション全体の設備を現地でよく確認しましょう。

エレベーターについては、エレベーターの数と総戸数のバランス、「高層階用エレベーター」と「低層階用エレベーター」に分かれているのか、エレベーターの昇降時間などを見ます。

地震や浸水など災害時の対策も要チェックです。

たとえば、非常電源で動く非常用エレベーターの有無や最大稼働時間、食料・飲料水の備蓄などがチェック事項として挙げられます。

タワーマンション高層階の部屋の住環境をチェック

タワーマンション高層階の部屋については、向きや眺望などの住環境を確認しましょう。

住戸から、エレベーターや駐車場までのルートと距離、災害時の避難経路の確認も大切です。

エレベーター等まで遠すぎても不便ですが、近すぎても人の声や物音が聞こえやすくなります。

タワーマンションが建設中の場合は、CG写真などをチェックし、部屋の内部はモデルルームなどで内装や設備をチェックするとよいでしょう。

管理費・修繕積立金などの固定費をチェック

マンションの日常的な管理や清掃、共用部分の光熱費などに使われる費用である「管理費」と、マンションの大規模修繕等に備えて積み立てられる「修繕積立金」は、いずれもタワーマンションの方が、一般のマンションより高額になる傾向があります。

「平成30年度マンション総合調査結果」(国土交通省)によると、マンション全体の一戸あたり月額管理費平均は16,213円であるのに対し、20階建て以上のタワーマンションの平均は約25,069円。

修繕積立金については、マンション全体の平均が11,875円である一方、20階建て以上のタワーマンションの平均は月額13,699円となっています。

【管理費・修繕積立金の月当たり平均額(単棟型)】

管理費 修繕積立金 管理費・修繕積立金計
マンション全体 16,213円 11,875円 28,088円
20階建以上 25,069円 13,699円 38,768円

タワーマンションは、共用ラウンジなどの共用施設だけでなく非常用エレベーターなどの特別な設備を備えており、居住者向けのサービスも充実しているため、一般のマンションより維持管理コストがかかります。

また、高層建物であることなどから大規模修繕にコストがかかり、修繕積立金も一般的なマンションより高くなっています。

管理費および修繕積立金の将来的な値上げの可能性についても確認しておきましょう。

修繕積立金が「段階増額積立方式」で徴収されている場合、一定年数ごとに修繕積立金が値上げされる可能性が高くなります。

また現状の修繕積立金が安い場合も今後の値上げに注意が必要です。

中古のタワーマンションの場合は、大規模修繕が済んでいるのか、近い将来する予定があるのか、長期修繕計画がきちんと立てられているかなどもチェックポイントです。

タワーマンションの管理規約をチェック

管理規約も必ず確認しましょう。

景観上の理由や物落下防止のため、ベランダに洗濯物が干せない、ベランダに植物や家具などを置くことを禁止されている場合があります。

ベランダに洗濯物が干せない場合は、浴室乾燥機が付いているか、室内に干すスペースがあるかなども確認しておくと良いでしょう。

まとめ

タワーマンション高層階の住戸は、高額な取引価格にもかかわらず根強い人気があります。

タワーマンション高層階のメリットは、眺望や日当たり・風通しが良い、地上の騒音があまり気にならない、虫が室内に入ってきづらい、防犯性に優れプライバシーを保ちやすい、資産価値が高いなど、たくさんあります。

一方、タワーマンション高層階は、外に出るのに時間がかかる、災害時に階段を上り下りするのが大変、夏は暑すぎることがある、購入価格やコストが高いなどのデメリットもあります。

節税上のメリットは薄れつつあるため、タワーマンション高層階のコストを抑えるためには、中古物件を選ぶ、最上階を避ける方法も検討してみましょう。

タワーマンション高層階の部屋をチェックするにあたっては、周辺環境、タワーマンションの設備、高層階の住環境、購入後の固定費、管理規約の内容を確認することが大切です。

一口にタワーマンション高層階と言っても、立地や建物のグレードや設備によって様々ですし、人によってタワーマンション高層階の住戸に求めるものは異なります。

上述したようなタワーマンション高層階のメリット・デメリットを踏まえ、自身にとって最適な物件を探しましょう。

なお、タワーマンション高層階の住戸の購入を検討している場合は、信頼できる不動産会社に相談するのも一つの方法です。

この記事をシェアする

当サイトおすすめの仲介手数料無料で売買に強い不動産会社はこちら

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です