
高層建築が流行り始めた当初から2000年代初頭まで、タワーマンションは稀少性が高く資産価値が下がりにくいと言われていました。
しかし、1997年に建築基準法の規制が緩和されて以来、タワーマンションの棟数は増加。
現在も資産価値は高いものの、以前と比べると稀少性がやや薄れ、物件間格差が生じているのが実情です。
それでは、資産価値の高いタワーマンションとは、どのような特徴を持っているのでしょうか。
目次
タワーマンションが人気の理由
タワーマンションは、一般的に高さ60m以上で20階建以上のマンションを言います。
立地にもよりますが、新築のタワーマンションの契約率は一般のマンションより高く、完成前に完売するケースも。
一体なぜ、それほどまでにタワーマンションが人気なのでしょうか?
ここでは、タワーマンションが人気を博している理由を紹介していきます。
タワーマンションはステータス性が高い
タワーマンションは高層で建物のグレードが高く耐震性に優れているため、地域のランドマークになっていることがあります。
タワーマンションは依然としてブランド力があり、所有すること自体がステータスにつながっていることから、主に富裕層から高い人気を得ているのです。
タワーマンションは節税上のメリットがある
節税上のメリットを得ることを目的に、タワーマンションを購入する方も多くいます。
タワーマンションに限らず、戸建て住宅やマンションなどを不動産で所有していると、不動産の価値と同額を現金で所有している時に比べて相続税は低く抑えられる傾向にあります。
これは、相続税計算上の基礎となる相続税評価額が、不動産の時価(市場で取引されている価格)より低いためです。
さらに、タワーマンションの場合、他の不動産よりも相続税節税効果が一層高くなります。
タワーマンション各戸の土地の相続税評価額は土地全体の評価額を各戸の面積割合で按分した額となるため、総戸数の多いタワーマンションでは、各戸の土地の評価額が低く抑えられるのです。
また、各戸の建物評価額も、建物全体の評価額に各戸の面積割合で按分して算出されます。
つまり、各戸の相続税評価額は、単純に面積のみで按分されるため、低層階であっても、高額で取引される高層階であっても、専有面積が同じであれば同額になります。
このため、タワーマンション高層階の住戸ほど節税効果が高く、富裕層が節税目的でタワーマンション高層階を購入するケースが多く見られました。
なお、固定資産税評価額も相続税評価額と同様の算出方法でしたが、2017年の税制改正で、上層階ほど評価額が高くなるよう定められました。
今後、相続税評価額の算出方法も見直される動きがあるため、税制改正については注意が必要です。
タワーマンションは資産価値がある
タワーマンションが人気の理由として、「資産価値」の高さがあります。
タワーマンションは立地が良いことから高値で売却しやすく、高額家賃で賃貸しやすいため、事業の一環としてタワーマンションを運用するケースがあるのです。
タワーマンションは高値で売却しやすい
タワーマンションは資産価値が下がりにくく、将来売却する際に高額での取引が可能です。
特に、後述するように立地が良く、建物や設備のグレードが高く、眺望に優れ、生活利便性に優れるエリアにあるタワーマンションは、築年が経っても取引価格が下がりにくいと言われています。
タワーマンションは賃貸需要がある
多くのタワーマンションは、賃貸需要も優れています。
賃貸物件を探している人は交通利便性を重視する傾向があるため、駅直結や駅近のエリアなど、利便性の優れたエリアに建てられることが多いタワーマンションには賃貸需要が発生しやすいのです。
資産価値の高いタワーマンションの特徴
タワーマンションが珍しくなくなった昨今、タワーマンションの資産価値は物件間で格差が広がっています。
では、タワーマンションの中で、資産価値が高く将来的に資産価値が下落しづらい物件は、どのような特徴を持つのでしょうか。
立地が良いタワーマンション
立地条件の良し悪しは、タワーマンションの資産価値を図る上で最も重要な項目です。
立地が良いタワーマンションは資産価値が高く、築年数が経っても資産価値が下落しづらいという特徴があります。
その時の経済状況にもよりますが、立地条件の良いタワーマンションは新築時の価格を長期間に渡って維持できるほどです。
「マンションは立地がすべて」と言われており、立地条件は資産価値の8割近くを占めるため、駅から徒歩圏内にないマンションの場合は需要が大きく下がることになります。
たとえ建物のグレードが高く施設が充実していたとしても、立地が良くない場合、不人気物件となってしまいかねません。
ここでいう、「立地が良い」エリアとは
- ブランド価値のあるエリア
- 交通利便性の高いエリア
- 生活の利便性が高いエリア
のことであり、3つの条件すべてを満たすエリアにあるタワーマンションはより資産価値が高くなります。
それぞれのエリアについて、以下で詳しく見ていきましょう。
ブランド価値のあるエリア
タワーマンションが建てられ始めた時は、都心5区など従来からブランド価値のあるエリアの物件が中心でした。
その後、かつて工場や倉庫が建っていた湾岸エリアにタワーマンションが建てられ始め、都心へのアクセスの良さと眺望の良さなどから、湾岸エリアもブランド価値のあるエリアになっています。
ブランド価値のあるエリアは、エリアの知名度が国内および海外において高く、そのエリアに住んでいることが一種のステータスとして機能するため、タワーマンションの資産価値が高く価値も下がりにくい傾向にあるのです。
また、郊外に建つタワーマンションでも、周辺に高層建物がなく、そのエリアのランドマークになっているようなタワーマンションは、資産価値が高くなっています。
交通利便性の高いエリア
前述したように、タワーマンションに限らずマンションの資産価値は交通利便性に大きく影響されます。
特に都心にある駅直結のタワーマンションは稀少性が高く、資産価値も高くなりやすいです。
郊外でも、ターミナル駅や快速停車駅に直結または駅近のタワーマンションは、相対的に資産価値が高くなります。
生活の利便性が高いエリア
交通利便性の高いエリアにあるタワーマンションは、生活利便性も高いことが多いです。
たとえば、駅前にあるタワーマンションであればたいていの場合、周辺に商業施設があります。
ただ、交通利便性が良ければ、必ず生活利便性も高いとは限りません。
タワーマンションが建てられ住民が一斉に入居すると、そのエリアの人口が急増することになります。
過去には、複数のタワーマンションが建てられたエリアで、近辺の学校が定員を超えてしまった例もあります。
人口の増加に対応できる環境が整っていないエリアでは、人口増加に従ってタワーマンションの資産価値が下落してしまうこともありますので、あらかじめ注意しておきましょう。
部屋からの眺望が良いタワーマンション
景色がきれいな物件を所有していることもステータスになり得るため、周囲に高い建物がない、などの理由で眺望が良いタワーマンションも資産価値が高いといえます。
たとえば、湾岸エリアのタワーマンションは、川沿いにあり夜景も見られる眺望の良さが人気の理由。
同じタワーマンションの中でも、一般的に高層階ほど眺望が優れるので、高層階の方が資産価値が高い傾向にあります。
特に、最上階の住戸はその稀少性も手伝って、タワーマンション内で最も資産価値が高くなるのが一般的です。
共用の施設やサービスが充実したタワーマンション
タワーマンションは施設やサービスが充実しており、ホテルライクな生活ができるのが魅力の一つです。
特に、他よりも防犯性にすぐれ、施設やサービスが充実しているタワーマンションは、ひときわ資産価値が高いといえます。
タワーマンションの施設として代表的なものは、ゲストルーム、フィットネスルーム、キッズルーム、シェアオフィスななどです。
また、クリーニングや宅配物の受け渡し、タクシーの手配などを行うコンシェルジュサービスが付いている場合は、さらに資産価値が上がることがあります。
タワーマンションを実際に購入する際の注意点
タワーマンションを実際に購入する際には、どんな点に気を付けたらよいでしょうか。
ここでは、資産価値に影響を及ぼす管理費・修繕積立金の額、災害時対策、不動産投資市場の情勢について、説明します。
管理費・修繕積立金の額と値上げの可能性
マンションを購入すると、所有している間は毎月「管理費」と「修繕積立金」を支払わなければなりません。
「管理費」は、日々の管理にかかる費用で、建物や設備の清掃・点検費や管理人の人件費などに、「修繕積立金」は、何年かに一度行う大規模修繕の費用の積み立てに充てられます。
タワーマンションは、一般のマンションに比べて設備やサービスが充実している分、管理費が高額になりがちです。
特に、高層建物であるタワーマンションの「大規模修繕」は、外壁塗装をする際足場の代わりにゴンドラが必要だったり、特殊な設備の交換費用が必要だったりするため、一般のマンションより遥かに高額といえます。
毎月の支出が重なると思わぬ金銭の負担となる場合がありますので、タワーマンションを購入する前に、必ず「管理費」と「修繕積立金」をチェックし、無理せずに払える金額であることを確認するようにしましょう。
なお、タワーマンションによっては、住戸を販売しやすくするため、新築当初の管理費・修繕積立金の額を抑えて、5年度ごとなどに値上げする予定の物件もあります。
現在の額だけでなく、将来の値上げの予定もチェックしておくことが大切です。
計画的な値上げ以外にも、大規模修繕のコストが予定していたよりもかかりそうな時や、タワーマンションの管理状況が悪い場合にも、将来の値上げの可能性が高くなります。
タワーマンションが新築でない場合は、管理状況や修繕履歴、長期修繕計画もチェックするようにしましょう。
災害時の対策が十分なされているタワーマンションか
日本は地震大国であり、かつ近年は気候変動などの影響で大型台風も増えています。
災害対策が不十分なタワーマンションは被災時に資産価値が大幅に落ちてしまう可能性が高いため、物件の災害対策については、購入前に必ずチェックするようにしましょう。
過去には、地震だけでなく、大型台風によりタワーマンションの配電盤が浸水し、長期間停電が続いたケースがありました。
このような事態が起こると、居住者は不便な生活を強いられるだけでなく、資産価値そのものが大きく失われてしまいかねません。
タワーマンションを購入する際には、配電盤が浸水しないよう2階以上に設置されているか、非常用発電機があるか、あるとすれば何日分くらいあるのか、などをチェックしましょう。
また、「ハザードマップ」を見るなどして、浸水被害が起きにくいエリアのタワーマンションを選ぶことも重要です。
タワーマンションの不動産投資市場の状況
タワーマンションは資産価値が高いですが、他の投資対象と同様、将来にわたって安定的に資産価値を維持できるとは限りません。
そもそも不動産は、その時の景気、金融・為替市場、不動産投資市場の状況によって資産価値が変動しやすい資産です。
中でもタワーマンションは、自身の居住目的ではなく賃貸に供する投資目的で購入する外国人投資家も多く、日本だけでなく世界の不動産投資市場の状況に左右されやすい、といった一面があります。
特に、立地条件が悪いタワーマンションは、不況時などに値崩れしやすいため、注意が必要です。
タワーマンションを購入する際には、不動産投資市場全体、およびタワーマンションがあるエリアの現状を分析し、将来の動向を予測するようにしましょう。
不動産投資市場の状況
不動産投資市場の状況は、国内外投資家の動きや日本の不動産市場、為替・金利の動向などが参考とできます。
また、タワーマンションは節税目的で購入する方も多いため、税制改革が資産価値に影響を与えるケースも否定できません。
日ごろから、これらの動向をチェックしておくようにしましょう。
タワーマンション周辺の状況
タワーマンション周辺の状況も、資産価値に影響します。
たとえば、将来的に、周辺に競合物件となるタワーマンションが建てられた場合は眺望が妨げられる可能性がある他、相対的な資産価値が下がり、売れにくく貸しにくい物件になってしまう可能性があります。
周辺エリアの開発状況や人気度もあらかじめチェックしておき、資産価値が急落するリスクがないことを確かめておきましょう。
まとめ
この記事では、タワーマンションが人気の理由として、ステータス性があること、節税上のメリットがあること、資産価値があることを挙げました。
資産価値の高いタワーマンションは、立地が良い、眺望が優れる、共用施設やサービスが充実している、といった特徴があります。
また、資産価値の高いタワーマンションを探して購入を検討する際には、
- 管理費・修繕積立金の額と将来の値上げの可能性
- 災害時の対策が十分なされているか
- 不動産投資市場の状況
に注意するようにしましょう。
タワーマンションが増えた今、物件間の格差が大きくなりつつあります。
タワーマンションを購入する際には、資産価値が高いタワーマンションの特徴を踏まえ、購入時の注意点を参考に、資産価値が高く将来的にも資産価値が下落しづらい物件を探すようにしましょう。
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